町田の夜に、「25:00」と書かれた看板が灯っていた。
一日が終わったあと、まだ少しだけ帰りたくない夜がある。
誰かともう一杯飲みたい夜。
歌を一曲だけ入れてから帰りたい夜。
あるいは、特別な理由はないけれど、どこかの扉を開けたくなる夜。
そんな時間に似合う名前だと思った。
パブ25:00。
入口の灯りには、どこか懐かしい余韻がある。
新しすぎず、飾りすぎず、それでいて妙に足を止めてしまう。
町田の夜の中で、少しだけ時間がゆっくり流れているような佇まいだった。
扉を開けると、店内にはレトロで落ち着いた空気が広がっていた。
派手なネオンで押してくるわけではない。
大きな声でにぎやかさを演出するわけでもない。
けれど、カウンターに腰を下ろすと、不思議と肩の力が抜けていく。
昔からそこにあったような内装。
ほどよく灯る照明。
グラスの並ぶ棚。
初めて来たはずなのに、どこか懐かしい。
スナックやパブの居心地というものは、豪華さだけでは決まらないのだと思う。
そこに座った時、自然に息ができるかどうか。
誰かと話しても、黙って飲んでも、どちらでも許される空気があるかどうか。
25:00には、その余白があった。
席につくと、手作りのお通しが三種並んだ。
紫キャベツの和え物。
しっかり味の染みたゴボウ。
そして、玉子焼き。
小さな皿がいくつも並ぶだけで、なぜかその夜が少し豊かになる。
派手な料理ではない。
けれど、酒の横にこういう手作りの皿があると、それだけで店の温度が伝わってくる。
グラスを持つ前に、まず箸が進む。
すると、酒も自然と進んでいく。
こういう始まり方をする夜もいい。